CDSと宝くじ 2008 10 13
日本には、ロト6という宝くじがあります。
これは、6個の数字を予想する宝くじです。
基本的に、宝くじの売り手は、必ず儲かるはずです。
そういう仕組みがあるのです。
ロト6という宝くじは、1等が2億円だったと思いますが、
もし、1等の当選者が10人いたら、どうなるか。
2億円を10人で分けることになり、
一人当たり2000万円となってしまいます。
10人全員が2億円もらえるとなると、
宝くじの売り手は、儲からないでしょう。
しかし、こういう考え方もあるでしょう。
なかなか当選者が出なくて、
次回へキャリーオーバーするケースが多くなってくると、
宝くじの売り手は、こう考えるかもしれません。
「1等の当選者が複数出現することは、あり得ないかもしれない」
そこで、宣伝のために、あるいは利益を増やすために、
1等の当選者が何人いても、全員に2億円払うとすると、どうなるでしょうか。
これは、やってはいけない禁じ手でしょう。
確かに、一時的に、宝くじの売り手は儲かるかもしれませんが、
いつか必ず、売り手は破綻するでしょう。
理論的には、1等の当選者が複数になるどころか、
何十人も出現する可能性があるのです。
もちろん、そういう可能性は、確率的に数万分の1か数百万分の1でしょう。
しかし、たとえ、確率が数百万分の1でも、
それが明日起きたとしても、数学的には間違いないはずです。
(実は、数年前、ロト6の1等の当選者が数十人になったことがあるのです。
その時は、1等でも、当選金が数百万円程度になってしまいました)
CDSが、時に、英国のブックメイカーに近いと言われることがあります。
最近でも、ニュースのコメントで、そういうコメントがありました。
それは、おそらく、こういうことだと推定しています。
A銀行がB社に対して債権があるとします。
しかし、心配性のA銀行は、B社が倒産するのではないかと不安です。
そこで、G社が発行するCDS保険に加入することにしました。
A銀行は、CDS保険料を払えば、万が一、B社が倒産しても、
G社が、保険金を払ってくれる(債権を保証してくれるのです)。
ここまでは、昔からある保険に近い、
あるいは民法の債務保証と、大して変わらないでしょう。
しかし、CDSは、金融技術によって、もっと進化していると思います。
理論的には、まったく関係のない第三者でも、CDS保険を買えると思います。
B社が危ないと予想するJ氏も、CDS保険料を払って、
B社の倒産に賭けることが理論的に可能です。
J氏が、そう予想するならば、K氏もB社の倒産に賭け、
そして、みんながB社の倒産に賭けるならば、
自分も賭けるという具合に増える可能性もあるのです。
こういうCDS保険を売る方も、商売繁盛です。
何しろ、アメリカ経済は、空前の好況でしたから、
B社が倒産するなんて、あり得ないと思うでしょう。
保険料収入が、丸儲けと思うでしょう。
だから、まったく関係のない第三者に、
CDS保険を売りまくることも、あり得ると思います。
そして、CDS保険という「新手の保険業」が成功するのを見て、
次々と、みんなが参入し、CDS保険市場が急拡大する可能性もあるのです。
しかも、規制もなく、監督官庁もなく、まるでパラダイスです。
新大陸を発見したコロンブスのように、新天地だと思うでしょう。
これは、金融技術の進歩と、金融自由化の成果だと思いますが、
実際に、こうしたCDSの使い方が行われたか、
データがないので、わかりませんが、理論的には可能だと思います。
さて、このパラダイスは、どうなるのでしょうか。
先ほどの「ロト6」という宝くじの話を思い出してください。